軍縮軍拡アメリカ合衆国擬人化集団を対戦させ集団の構成変化を検証現実社会の複雑な動きを再現して観測する面白さ一方が核兵器の開発を進めるから、他方もそれに対抗して開発する。お互いに止めた方がいいのはわかっているけれど、自分が止めたときに相手から攻撃されたらひどい目に遭う。だから核兵器がなくならない。しかし〝1回だけやるから、そういう解になるのであって、繰り返し行ったらどうなるのか〟などの意見が出てきて、〝最初は協力するけれど、次は裏切ったら?〟など、いろいろな戦略を考えるようになってきました。 80年代に政治学者のアクセルロッドが、囚人のジレンマゲームにおいて、どういう戦略が有効なのか、コンピュータープログラムのトーナメントを行いました。そこで連覇したのが、ずっと協力していても相手が一度裏切ったらこっちも裏切りで返す、相手が協力してくれたらこっちも協力する、という「しっぺ返し戦略」です。その後コンピューターの精緻化が進んで、無限にゲームを繰り返すと、すべての可能性が出てきてしまうのですが、私はそれも違うような気がしていて。人間の行動パターンには傾向的なものがあるように思い、20年くらい前からその検証に取り組んでいます。 る コンピューター上に擬人化した個体の集団をつくり、お互いにゲームをさせて高い得点を出した個体同士をランダムに交配させます。遺伝子の進化のポイントは選択・交■・突然変異であり、コンピューター上でそれらを行って進化させるというのが、遺伝的アルゴリズムのエッセンスです。50〜100人程度の集団に、例えば報恩(協力する)80%・報復(裏切えた答えを与え、遺伝的アルゴある意味4つの領域を循環しつつも、それ以外のパターンがあることもわかってきました。遺伝的アルゴリズムによる突然変異で集団が変化していく様子について、いろいろ条件を変えながら見ています。)20%というように確率を変リズムを用いてシミュレーションすると、最初は報恩と報復の要素がバラバラですが、ゲームを続けていくと集団の構成が変化していきます。今までの研究で、〝報恩が報復を大きく上回る〟〝しっぺ返し〟〝報復ばかりで報恩がない〟〝報恩と報復が同じくらい〟というように、アクセルロッドがコンピューターシミュレーションを行ったのは1987年頃で、当時のコンピューターはもっと原始的なものだったので難しかったと思います。今後は〝AIが入るとどうなっていくのか〟というのもテーマにし、勉強をし始めているところです。AIの『α碁』の開発者に話を聞いたときに、「確かにプログラミングをして、いろいろなアルゴリズムを用意したのは自分だけど、『α碁』がなぜそのアルゴリズムを選んだのかわからない」と答えていました。そういうブラックボックス的な存在であるAIが、私たちの生活に直結する金融や経済でお互いに最大利潤を上げるための、いわゆるゲームをしています。AIには遺伝的アルゴリズムが使われているはずなので、そもそも不安定な金融や経済の世界に突然変異が起こることで、その不安定の幅が非常に大きくなるのではと懸念しています。関係ありませんが、現実社会における集団の動きをコンピューター上の小さいシミュレーションのなかで説明したり、与える条件をコントロールすることで集団の動きが変わってくるところなどに面白さを感じています。今後は人口が減少していく世界のなかで、マクロ経済はどのように変異していくのかを検証していきたいと思っています。私の研究に今のところAIは4CREATION NO.207 2020.10両国にとって、状況Aが望ましいことはわかっているが、自分だけが「軍縮」するとBやCの状況になるのが恐いので、状況Dに陥る。大学院で数学をやってみたいと思い、試験勉強のため京都の古本屋で購入した参考書。なかなか手に入らない稀覯書でもあった。ソビエト連邦(ロシアの前身)軍縮(100, 100)状況A(200, 0)状況C軍拡(0, 200)状況B(50, 50)状況D
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