CREATION_214_EBOOK
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ンピュータを利用することが当然になっています。コンピュータを使えば、決算書には載っていない非財務情報、例えばモノが売れた地域や顧客の男女構成や年齢層、経営戦略や事業戦略などを記録することが可能ですし、もっと速く分析ができるのでは?と注目したことが研究を始めたきっかけでした。有価証券報告書を開示している上場企業などを対象に、決算書データを集めることが研究の第一歩でしたが、決算書データはPDF化されているため、そこに記されている数値を一つひとつ手入力しなければならず、何千何万社ものデータを扱うには、手作業ではとても時間が足りないということに気付かされました。記録技術により、コンピュータで決算書を“人が目で見る”ためにPDFにしましたが、PDF化したことによってコンピュータが得意とする膨大な情報を記録したり、詳細に分析したりするためには扱いづらいという回りくどいことをしていることが明らかになりました。その後、PDF形式を表形式に変換するといった試みがなされ、そこで一旦は解決したように思えましたが、実際には精度が良くないなどの問題があり、今では目的とする情報を集めることが容易にでき、同時にコンピュータが処理しやすい形式そのものを探求するようになりました。ビジネスの現場では様々なことが起こっており、そのなかから必要な情報を選択してデータを記録する必要があります。手書き時代と比べてコンピュータは多様な情報を簡単に記録することができますが、一つの出来事に対するデータ量を高めてしまうと、膨大なデータを集約する会計処理が追いつかなくなってしまうため、アウトプットである決算書データという一つのゴールを目指して必要な記録を導かねばなりません。何でもデータ化して残せるとなったとき、現実の出来事から何を記録すればいいのか、どのデータを残すのか、それが今の課題と手書きを前提として培った会計のなっています。現在、上場企業はXBRLという形式で決算書を作成・提出することが義務付けられていますが、まだまだ使いにくいといわれているため、XBRLで作成された各社の決算書を分析しながら、何が問題になっているのかを調べているところです。コンピュータで大量の会計データを記録しながら、より速く分析することが可能になり、誰もが気軽に利用できるようになれば、個人で決算書分析を行うこともできるようになるでしょう。銀行預金や年金だけでは将来が不安視されている現代。資産形成手段として投資が注目され、スマートフォンでも気軽に投資が行えるようになるなど、以前より投資に対するハードルが低くなりました。投資先を選ぶ際に、候補となる投資先の会計データを利用・分析することができるようになれば、投資を通じて経済の活性化にもつながるでしょう。決算書分析は就職活動にも役立ちますし、自身の興味ある業界や企業が置かれている状況を知ることは重要です。他分野にもれず、会計領域でもAI技術はとても注目され、膨大な会計データとAIを掛け合わせることで、会計処理や分析の自動化、企業の業績の良し悪しといった特徴を見出すといったことなどが期待されています。ただしAIの導入は良いことばかりではありません。個人がスマホで数千数万社の分析を行えたり、証券会社が有料配信するような情報にアクセスできるようになったり、AIの一元管理により会計データを精査できるなどの利点がある反面、AIの指示通りに行動が支配されたり、公認会計士が減ったりするほか、人間が考えなくなるため会計に関する専門知識が伝達されず、今後革命的な発展が見込めなくなるなどの欠点もあります。このような新しい状況を想定し対処しながら、今後も会計データのあり方を探求していきたいと思っています。        4決算書分析をもっと身近なものへコンピュータにとっての良いデータとは何か?学術研究データを一つひとつ解析し、間違いを探していく作業は根気が必要だが、楽しさもある。CREATION NO.214<Cash>1000000</Cash>同じ「100万円」でも、人とコンピュータでは理解しやすい形式が異なっている現金100万円

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