三貨の動向から経済発展を探る私の研究目的は、近世日本の貨幣動向から経済がどのように発展していったかを探ることにあります。徳川家康の天下統一後、幕府は金・銀・銭からなる「三貨制度」を確立しました。そこから経済発展に貨幣がどのように寄与していったのか、旧幕府貨幣※改1鋳ごとの金銀※在2高記録、全国各地の商家・農家の経営帳簿や金融※証3文といった、貨幣流通や米価変動に関する既存データを分析し、歴史像を検証していくというものです。その際、〝小額貨幣使用比率増=貨幣経済化〟限られた史料から三貨流通動向を検証し近世庶民の経済的発展の実態を明らかにする 【略歴】1964年 滋賀大学経済学部卒業1967年 大阪大学大学院経済学研究科博士課程中退1968年 大阪大学経済学部 助手1969年 松山商科大学経済学部 講師(78年教授、89年校名変更にて松山大学)1983年 大阪大学より経済学博士の学位授与1988年 米国スタンフォード大学 客員研究員(1年間)2000年 松山大学大学院経済学研究科 研究科長(2004年まで)2012年 松山大学を退職、同名誉教授2017年 関西大学経済政治研究所 非常勤研究員(現在に至る)※1…市場に流通している貨幣を回収し、金や銀の含有率や形状を見直して新たな貨幣を流通させること。 ※2…貨幣需要に対応可能な金銀の総量。 ※3…貨幣の貸し借りに関する証書のこと。松山大学名誉教授 経済学博士「日本学士院賞」受賞記念pecialFOCUS岩橋 勝IWAHASHI Masaru学術研究SSpecial
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